この記事の内容
AIに指示を出せばアプリが作れるようになり、「これを副業にできないか」と考える会社員が増えています。一方で、SNSには「AIで月◯万円」「未経験でもすぐ稼げる」という広告があふれていて、どこまでが本当なのか分かりにくいのが実情です。結論から言うと、AIを使ったアプリ開発は副業として成り立ちます。ただし、収入になるのは「アプリを作れること」そのものではありません。お金を払うのは、困りごとを抱えていて、それが片づくなら払うと決めている人だけです。 この記事では、会社員が現実的に選べる4つの形、怪しい副業の見分け方、週に必要な時間、本業の困りごとからテーマを拾う方法、副業規定と預かるデータの扱いまでを順に整理します。ハコブネを運営する株式会社Walkers(累計開発実績300件)の現場で見てきたことと、公的機関の情報をもとに書きました。
この記事について
書いているのは、作る側です。ハコブネを運営する株式会社Walkersは、受託と自社事業で累計300件の開発に関わり、200社以上の事業づくりを支援してきました。監修は取締役の池田龍一です。
一般論ではなく、実際にやったことの中身で説明します。この記事に出てくる数字は、すべて公開済みの自社・支援先の事例から引いています。出典は記事の最後にまとめました。
AIを使ったアプリ開発の副業で、現実にある4つの形
AIを使ったアプリ開発の副業は、誰に何を渡してお金を受け取るかで、大きく4つの形に分かれます。最初にどれを狙うかを決めておくと、作る物の大きさと、必要な時間が決まります。
自分用ツールを作り、同じ困りごとを持つ人に小さく売る
最初の一本として始めやすいのが、この形です。まず自分の作業を楽にするツールを作り、同じ作業で困っている人に月額や買い切りで渡します。自分が最初のユーザーなので、何が要るかを迷わずに済みます。売れなくても、自分の作業は楽になったまま残ります。
受託の小案件を請ける
知人の会社や小さな店から、予約管理や集計の自動化のような小さな開発を請ける形です。Walkersの記事では、AIを使った開発でAIチャットボットを開発会社に頼んだ場合の相場を25〜50万円としています。小さな事業者にとっては簡単に出せる金額ではありません。開発会社に頼むほどではないが、手作業はもう限界という隙間が、副業の受託が入りやすい場所です。
企業の社内向けツールを作る
特定の会社の中だけで使う、在庫や日報、問い合わせ管理のツールを作る形です。不特定多数に売る必要がないので、集客の手間がかかりません。その代わり、相手の業務を理解する時間と、相手の社内データを預かる責任が増えます。
B2Bの小さなSaaSを育てる
ある業種の、ある作業だけを片づけるサービスを月額で提供する形です。4つの中ではいちばん時間がかかりますが、売上が積み上がります。たいていは、上の3つのどれかで同じ依頼を何度か受けたあとに、それを型にして生まれます。
「AIで月◯万」の怪しい副業を見分ける6つの確認点
AIを使った副業アプリについて調べると、講座や「サポート」をうたう勧誘にすぐ行き当たります。国民生活センターは2026年5月20日、副業サポートや投資の名目で消費者に借金をさせる業者について注意を呼びかけました。公表された相談事例には、副業サポートの費用のために1日で複数の消費者金融から借り入れをさせられた例や、AIで作った競馬予想ソフトの代金を借り入れて払わされた例があります。年収を大幅に超える金額の借金をさせるケースもみられるとしています。
申し込む前に、次の6つを確かめてください。一つでも当てはまれば、その話からは離れたほうが安全です。
- 収入の約束:「月◯万円」「すぐに元が取れる」と金額や回収期間を約束している
- 借り入れの案内:手元にお金がないと伝えると、消費者金融やカードローンでの支払いを勧めてくる
- 中身の非公開:何を教わり、何を作れるようになるのかが、契約前に具体的に示されない
- 期限で急かす:「今日だけ」「残り◯席」と、考える時間を与えない
- 画面共有の要求:遠隔操作アプリの導入や画面共有を求めてくる
- 売り先の不在:誰に何を売るのかではなく、「仕組み」や「放置で稼げる」話が中心になっている
最後の点がいちばん見落とされやすいところです。アプリ開発で収入が生まれるのは、誰かの困りごとが片づいたときだけです。売り先の話が出てこない副業の話は、売り先があなた自身になっていると考えてください。不安なときは、消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センターに相談できます。
週に何時間あれば始められるか
副業の時間は、本業の残業や家庭の事情で簡単に削られます。だから「時間ができたらやる」と決めた計画は、まず続きません。先に、週に確保できる時間の枠を決めて、その枠に合う形を選びます。
1. 週3〜5時間なら、自分用ツールから始める。 平日の夜1時間を数日と、休日の2時間ほどです。この枠では、相手の都合に合わせる受託は請けないほうが安全です。納期に追われて本業に響くからです。自分の作業を一つ自動化し、それを同じ職種の知人3人に使ってもらうところまでを目標にします。
2. 週6〜10時間なら、受託の小案件を一つだけ請ける。 打ち合わせ、作る時間、直しの時間を合わせると、小さな案件でも数週間はかかります。同時に二つは請けないことです。最初の一件は、相場より安くても構わないので、紹介してもらえる実績にすることを優先します。
3. 週10時間以上が数か月続けられるなら、小さなSaaSに挑む。 ただし、作る前に「払う」と言ってくれる会社が数社あることを確かめてからにします。
どの枠でも、時間の半分は作ることに使い、残りの半分は人と話すことに使う配分をおすすめします。AIで作る速度が上がったぶん、時間が足りなくなるのは、作る工程より売る相手を探す工程です。
テーマは本業の「面倒」から拾う
副業のテーマを、流行っている分野や「AIで何が作れるか」から探すと、競争の激しい場所に出てしまいます。会社員にしか拾えないテーマは、本業の中にあります。毎週同じ手順で埋めている表、担当者しか分からない確認作業、期限を手帳で追っている管理業務などです。
ハコブネが2026年8月に東京・目白台とオンラインで開いたAI新規事業立ち上げハッカソンでは、参加者が「社員の資格期限管理アプリ」や「類似のPoCを横断して比較する企業向けのPoC設計ツール」を作りました。後者を作ったのは開発がまったく初めての参加者で、約4時間で形にして受賞しています。どちらも、仕事の中で繰り返し出会う面倒を、そのまま題材にしたものです。
本業の面倒からテーマを拾うときは、次の3つを確かめます。
1. 自分以外にも同じ作業をしている人がいるか。 同じ職種の知人や、同業の別の会社に聞けば分かります。
2. その作業に、いまお金か時間が使われているか。 誰かが毎月数時間かけているなら、それを減らすことに値段が付きます。
3. 勤め先の情報を使わずに作れるか。 本業の顧客名簿や社内資料を使わないと成り立たないテーマは、副業には向きません。この点は次の章で詳しく書きます。
参加者の中には、参加前はAIについて「効率化くらいしかイメージがなかった」と話していた方もいます。その方は当日、自己理解をもとに事業案を出す診断ツールを作りました。最初から大きな構想がなくても、手元の困りごとから始めれば題材は見つかります。
始める前に確認する副業規定と、預かるデータの扱い
副業を始める前に、勤め先の就業規則を読んでください。厚生労働省は2018年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作り、モデル就業規則からも「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削りました。とはいえ、各社の就業規則がそれに合わせて変わっているとは限りません。届け出が必要か、同業他社や取引先の仕事が禁止されていないかを確かめます。
特に気をつけたいのは、次の3つです。
- 競業:勤め先の取引先や競合から受託を請けると、規定に触れることが多いです
- 秘密保持:本業で知った顧客情報や社内のやり方を、副業の製品に持ち込まない
- 勤務時間と設備:会社のパソコンや勤務時間を使わない。AIツールのアカウントも個人のものを使う
受託や社内向けツールの形を選ぶと、相手の顧客名簿や売上のデータを預かることになります。Walkersの記事は、AI駆動の開発で起こりうるトラブルとして、運用中の不正アクセスやデータ漏えいを挙げています。そのうえで、開発の段階で通信の暗号化、認証の管理、入力データの検証、アクセス制御を入れ、リリース前に脆弱性診断をすることを勧めています。個人で請けるなら、本物のデータを使う前に、ダミーのデータで一通り動かして見せることを習慣にしてください。AIに渡すデータに個人情報を含めないことも、契約の前に相手と取り決めておきます。
税金も確認が必要です。国税庁によると、給与を1か所から受けていて源泉徴収されている会社員でも、給与と退職所得以外の所得の合計が年20万円を超えると確定申告が必要です。売上ではなく、経費を引いた所得で判断します。
作ったあとに、お金になるまでの順番
AIで作れるようになったことで、作る時間は大きく縮みました。Walkersの記事では、個人で開発する場合の目安を、初期費用0円、運用費用を月5,000円〜5万円としています。お金の面での参入は、確かに軽くなっています。ただ、同じ記事は、バイブコーディングの開発でいちばんつまずきやすいのはセキュリティ設計だとも指摘しています。
お金になるまでの進め方は、値段を先に決めて人に伝える、最初の数人に手渡しで使ってもらう、受け取り方を一つに絞る、の順です。副業の初期に広告収入を狙うと、利用者の数が足りずに成り立ちません。会社相手なら月額か、受託なら一括払いのどちらかで始めるほうが分かりやすいです。収益モデルの選び方と最初の有料ユーザーの見つけ方は、個人開発の収益化の記事で詳しく整理しています。
この流れの中で、AIが速くしてくれるのは主に作る工程です。値段を決める、相手を探す、使ってもらうといった工程は、人と話す時間でしか前に進みません。
一人で続けにくいときの相談先
副業の開発は、本業を終えた夜に一人で進めることが多く、止まったときに相談できる相手がいません。テーマが決まらない、値段の付け方が分からない、作ったものを誰に見せればいいか分からない。こうした詰まりは、作る技術より、話せる相手がいるかどうかで抜けられるかが決まります。ハコブネは、AIで新規事業を立ち上げる個人・経営者のコミュニティで、運営は株式会社Walkersです。アイデアがなくても、開発が初めてでも参加できる1DAY新規事業立ち上げイベント(会員は参加費無料)を開いていて、日程は1DAYイベントのページで案内しています。月1〜2回、60〜90分のランチ会もあります。いきなり入会を決める必要はなく、オンラインの無料相談会で、いま考えている副業のテーマを話しながら決めることもできます。なお、ハコブネは案件の紹介や仕事のマッチングは行っていません。
よくある質問5選
質問1プログラミング未経験でも、AIでアプリ開発の副業はできますか?
自分用のツールを作るところまでは、未経験からでも届きます。ハコブネのハッカソンでも、開発がまったく初めての参加者が約4時間でツールを形にしました。ただ、他人のデータを預かる受託は、セキュリティの基本を学んでから請けてください。
質問2「AIアプリで副業」をうたう講座は怪しいのですか?
講座そのものが悪いわけではありません。収入の約束、借り入れの案内、契約前に中身を見せない、の3つのどれかがあれば避けてください。国民生活センターも「簡単に稼げる」という言葉を信じて借金をしないよう呼びかけています。
質問3会社にバレずに副業できますか?
隠すことを前提にするより、就業規則を読んで、必要なら届け出るほうが安全です。届け出ずに競業や秘密保持の規定に触れると、副業の収入より大きなものを失うことがあります。
質問4最初の受託案件はどうやって見つければいいですか?
知人の会社や、行きつけの店など、すでに信頼のある相手から始めるのが近道です。いま手作業で困っていることを聞き、ダミーのデータで小さく作って見せると話が進みやすくなります。
質問5副業の収入はいくらから確定申告が必要ですか?
国税庁によると、給与を1か所から受けて源泉徴収されている会社員なら、給与と退職所得以外の所得が年20万円を超えると確定申告が必要です。所得は売上から経費を引いた額です。詳しくは国税庁の案内か、税務署で確認してください。
この記事で触れた事例の出典
最終更新:2026年10月15日
