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スモールビジネス

マイクロSaaSのアイデア20選と、最初の10社の取り方日本の中小企業の実務から逆算して、小さく作って出す

2026年9月16日公開 / ハコブネ編集部

AIの津波に飲み込まれるか、ハコブネに乗るか。

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公開 2026年9月16日/最終更新 2026年9月16日 | 監修:池田 龍一(株式会社Walkers 取締役) | 読了 約9分

マイクロSaaSのアイデア20選と、最初の10社の取り方

マイクロSaaSは、一人か少人数で作って運営する小さなSaaSのことです。大きく当てることを狙わない代わりに、狭い業務にぴったり合わせられることが、そのまま最大の武器になります。この記事では、日本の中小企業の実務から逆算して、一人でも手が届く領域を20個挙げます。そのうえで、価格をどう付けるか、最初の10社をどうやって取るか、そして続けるか畳むかの判断をどこで下すかまでを扱います。アイデアはサービス名ではなく「どんな業務か」で書いているので、自分の身の回りの業務に当てはめながら読んでみてください。

この記事について

書いているのは、作る側です。ハコブネを運営する株式会社Walkersは、受託と自社事業で累計300件の開発に関わり、200社以上の事業づくりを支援してきました。監修は取締役の池田龍一です。

一般論ではなく、実際にやったことの中身で説明します。この記事に出てくる数字は、すべて公開済みの自社・支援先の事例から引いています。出典は記事の最後にまとめました。

マイクロSaaSが成立する条件は、規模ではなく狭さ

マイクロSaaSを「小さいSaaS」と捉えると、機能を削る話になりがちです。実際に効いているのは、機能の量ではなく対象の狭さです。狙う業務が狭いほど、作る量が減り、説明が短くなり、使ってもらえるまでの時間が縮みます。

一人で運営する前提を置くと、選べる領域には条件が付きます。導入のたびに現地調整が要るもの、24時間の即応が前提になるもの、法令の解釈が判断の中心にあるものは、少人数では回りません。逆に、次の3つが揃う業務は候補になります。毎月必ず発生すること。今は紙かエクセルか口頭で回っていること。そして、使う人が数人規模で完結することです。

「小さく作れるかどうか」は、着手前に見積もれます。Walkersの自社サービスPrompt Labは、構想からベータ版の公開まで3週間でした。スクール事業のTech Studioも、動画配信の仕組みを自社で1ヶ月で作って運営し、受講生は30名以上になっています。作る前から数ヶ月かかると読める案は、一人で始める最初の1本には向きません。

中小企業の実務から逆算した、狙いやすい20領域

日本の中小企業に共通するのは、担当が一人しかいない業務が多いことです。その人が休むと止まる業務、その人の頭の中にしかない手順は、ソフトにする価値が大きい。以下は、そうした業務を業務単位まで割ったものです。

紙とエクセルが残っている(1〜5)

1. 現場や訪問先で書いた日報の、写真付きでの提出と保管

2. 手書きの受発注伝票の起票と、控えの共有

3. 棚卸しの記録と、前月との差分表示

4. 出張・交通費の申請と、月末の締め

5. 車両や工具の貸出・返却の記録

期限と更新がある(6〜10)

6. 契約の更新日と、解約通知の期限アラート

7. 資格・免許・講習の有効期限の管理と、更新の案内

8. 設備・機器の点検日の管理と、担当者への通知

9. 顧客ごとの定期訪問サイクルの管理

10. 補助金や各種申請の提出書類のチェックリスト管理

人が少ないのに承認がある(11〜14)

11. 見積の社内承認と、送付履歴の記録

12. 稟議の回覧と、承認の記録

13. シフト希望の収集と、確定シフトの配信

14. 有給・特別休暇の申請と残日数の表示

業界固有の帳票(15〜17)

15. 業種ごとの作業報告書のテンプレート化と出力

16. 検査・品質記録の入力と、取引先提出用の書式への変換

17. 複数言語での掲示物・案内文の管理と差し替え

顧客とのやり取り(18〜20)

18. 予約の受付と、前日リマインドの自動送信

19. 問い合わせ対応の履歴と、担当引き継ぎのメモ

20. 会員や受講生への一斉連絡と、既読・出欠の集計

20個のうち、自分が実際にやったことがある業務、または身近な人がやっている業務に印を付けてください。マイクロSaaSで最初に効いてくるのは技術力ではなく、その業務の面倒くささを自分の言葉で説明できるかどうかです。

小さく作って出した3つの例

作る量を小さくすると何が起きるかは、具体例で見るとわかりやすいです。Walkersの自社サービスから3つ挙げます。

Prompt Lab。 構想からベータ版の公開まで3週間でした。ここでの学びは期間そのものよりも、「3週間で出せる範囲まで削った」という順序にあります。先に締め切りを置いて、その中に入る機能だけを残す進め方です。

HP Answer。 ヒアリングシートだけで打ち合わせ0回、48時間以内に初稿を3パターン出す形をとっています。価格は制作費0円・月額4,900円です。打ち合わせを0回にするという設計は、機能の話ではなく、運営を一人で回すための設計です。一人で作るなら、作る量だけでなく、売ったあとに発生する自分の作業も同時に削る必要があります。

Tech Studio。 動画配信の仕組みを自社で1ヶ月で作り、そのまま自社のスクール運営に使っています。受講生は30名以上です。自分たちが毎日使う業務をソフトにすると、直すべき箇所が自分の手で見つかるという利点があります。

3つに共通しているのは、最初から完成形を狙っていない点です。小さく出したあとに、使われた部分だけを厚くしていく。この順番が、少人数で運営を続けるための現実的なやり方です。

価格の付け方

マイクロSaaSの価格は、機能の数からは決まりません。判断の材料は次の3つです。

  • その業務に今かかっている時間と人件費
  • 代替手段(手作業、汎用ツール、外注)にかかっている金額
  • 自分が運営を続けるために必要な、1社あたりの最低ライン

このうち3番目を先に出しておくと、値付けが感覚にならずに済みます。一人で運営するなら、対応できる社数には上限があります。その上限と、生活と開発を続けるのに必要な金額から逆算すると、1社あたりいくら必要かが出ます。一人で運営するSaaSでは、何社まで面倒を見られるかが、そのまま単価の下限を決めます。

課金の形は、月額の定額から始めるのが扱いやすいです。使う人数に応じた席数課金は、顧客が増えるほど売上が伸びる反面、相手にとっては人が増えるほど負担が重くなります。療育支援のOne Companyは、ユーザー数に比例して費用が増える既存システムから、自社専用システムへの切り替えを選びました(開発6ヶ月)。少人数で運営するなら、値上げの条件をあらかじめ書いておくほうが、揉めごとを避けやすいと考えられます。

無料プランについては、業務系では必須ではありません。期間を区切った試用にしておくと、本当にその業務で困っている相手かどうかが早く判別できます。

最初の10社をどう取るか

広告や大がかりな集客は、この段階では効きにくいです。最初の10社は、ほぼ人づてで決まります。順番としては次のとおりです。

1. その業務を毎月やっている知り合いを、思いつく限り書き出す

2. 売り込みではなく、業務の手順を見せてもらう約束を取る

3. 見せてもらった手順の中で、いちばん面倒な一手間だけを作る

4. できたものを、見せてもらった相手に最初に使ってもらう

5. 使い続けてもらえたら、その人に同業を1人紹介してもらう

この流れは遠回りに見えますが、業務系のソフトは「同じ業務をしている人」の輪の中で伝わっていくため、結果的に速いことが多いです。会員システムをLINE公式アカウントと連携して開発したツナガル(高福合同会社)は、開発1ヶ月、開始から約2ヶ月で会員12名・LINEの登録が約60名という立ち上がりでした。数としては小さく見えますが、最初の10社は市場の大きさを測る数字ではなく、作ったものが使われ続けるかを確かめるための数字です。

もうひとつ、人に会う機会そのものを増やす方法もあります。ハコブネでは1DAY新規事業立ち上げイベント(会員は参加費無料、一般3,000円)や、月1〜2回・1回60〜90分のランチ会を開いています。2026年9月4日のランチ会は7名で、うち2名はメンバー以外(事業開発が本職の人と、社内新規事業の担当者)でした。作っているものを人に説明する回数は、そのまま説明の精度になります。

やめどきの決め方

一人で運営する以上、続ける判断と同じくらい、やめる判断が重要です。おすすめは、作る前に降りる条件を書いておくことです。ハコブネのハッカソンで運営が作った記録アプリBENLOGは、確かめる仮説を一点に絞り、合格ラインとして7日後の継続率40%、30日後20%、1日平均3.5件を先に置いていました。これは検証前に置いた目標値であって、実測値ではありません。それでも、線を先に引いておくと結果の解釈が事務作業になります。

やめる以外に、作り変えるという選択肢もあります。個人が運営するサカチムの有料版であるサカチムプラスは、当初は検索サイトの強化が想定されていましたが、対話を重ねる中で「チーム専用ホームページの質」へ方向を変え、配色を100種類実装しました。既存のサカチムには164チームが登録しています。反応がないときに先に疑うべきは、作ったものより、届ける相手と用途の設定です。

判断の目安としては、次の3つが揃ったときに立ち止まるとよいでしょう。使い始めた人が1ヶ月続かない。紹介が一件も生まれない。自分の運営作業が、売上に対して増え続けている。3つ目は特に見落とされやすく、一人での運営では致命傷になり得ます。

よくある質問6選

質問1プログラミングができなくてもマイクロSaaSは作れますか。

ノーコードで作られた業務システムの事例は実際にあります。1952年創業の一番飯店(高田馬場・スタッフ4名)は、紙伝票とトランシーバーの運用をノーコードのオーダーシステムへ移し、ベータ版まで2週間でした。ただし、作れることと売り続けられることは別の話なので、業務を理解する部分は自分でやる前提で考えてください。

質問2どのくらいの期間で最初のバージョンを出すべきですか。

一律の正解はありませんが、数週間から1ヶ月程度で出せる範囲まで削るのが現実的です。Prompt Labは構想からベータ公開まで3週間、Tech Studioは自社で1ヶ月でした。長くかかると読める案は、対象が広すぎる可能性を疑ってください。

質問3一人で運営していて、問い合わせ対応が回らなくなりませんか。

起こり得ます。だからこそ、売ったあとの自分の作業量まで含めて設計する必要があります。HP Answerが打ち合わせ0回の形をとっているのは、その一例です。導入時に説明が必要な機能を減らすほど、運営は軽くなります。

質問4ニッチすぎて社数が足りないのではと不安です。

社数の不安は、実際に何社あるかを数える前に感じることが多いものです。対象となる事業者の数を調べ、そのうち何割に届けば成立するかを、単価と合わせて計算してみてください。計算して足りないなら、業務は同じまま対象業種を広げる方向で調整できます。

質問5大きな会社が同じ機能を出したらどうなりますか。

起こり得ることとして織り込んでおくのが現実的です。ただ、汎用のツールに業務を合わせると隙間に手作業が残ります。語学学校の台湾トークは、生徒約370名・講師約70名を抱え、管理業務に月30時間かかっていました。その隙間に合わせられることが、小さく作る側の持ち場です。

質問6受託開発とマイクロSaaS、どちらから始めるべきですか。

一概には言えませんが、受託で業務に触れてからSaaSに移す進め方は取りやすい順序です。実際の業務を見ていないと、どこを削ってよいかの判断ができません。並行するなら、受託で得た知見のうち、共通化できる部分だけを製品側に移すと決めておくと混ざりにくくなります。

この記事について

池田 龍一

執筆:ハコブネ編集部 / 監修:池田 龍一

株式会社Walkers 取締役

池田は、ITとノーコードの事業開発・教育事業の立ち上げを経て2021年にWalkersを共同創業。100件以上のシステム開発に携わり、要件がまだ固まっていない案件や、他社から引き継いだ開発の立て直しを担当しています。

株式会社Walkersは、AI駆動開発・ノーコード開発のシステム開発会社です。累計開発実績300件、200社以上の支援、自社メディアの累計100万PV。受託開発と並行して、自社でも複数の新規事業を立ち上げています。

最終更新:2026年9月16日

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