この記事の内容
SESで客先に常駐していると、自分の仕事の先行きを自分で決めにくいと感じる場面があります。次の現場がどこになるか、契約が延長されるか、単価がいくらになるか。決めるのは所属会社と常駐先で、エンジニア本人ではありません。
そこにAIで開発の作業が速くなる流れが重なり、SESの将来性が気になっている人もいるでしょう。2026年9月に池袋で開いたハコブネのランチ会でも、参加者の間でSESの今後が話題に上がりました。答えが一つに決まる問いではありませんが、備え方は考えられます。
この記事では、SESという働き方がAIでどう変わりうるかを整理したうえで、会社に依存しない収入の柱として、副業で自分のプロダクトを持つ進め方を説明します。SESのエンジニアが最初にやるべきことは、プロダクトを作ることではなく、自分の会社の就業規則を読むことです。
この記事について
書いているのは、作る側です。ハコブネを運営する株式会社Walkersは、受託と自社事業で累計300件の開発に関わり、200社以上の事業づくりを支援してきました。監修は取締役の池田龍一です。
一般論ではなく、実際にやったことの中身で説明します。この記事に出てくる数字は、すべて公開済みの自社・支援先の事例から引いています。出典は記事の最後にまとめました。
SESの将来性をどう見るか

ハコブネを運営する株式会社Walkersは、AI駆動開発・ノーコード開発のシステム開発会社です。開発の現場にいる立場から、時間を売る開発の仕事は将来的に縮んでいく可能性が高いと考えています。SESも、時間や人月で稼働を売る形である点では、この流れと無関係ではありません。
稼働時間で売る形は、単価が下がりやすくなる
SESの契約では、エンジニアの稼働時間に値段がつく形が一般的です。AIを使えば同じ作業を短い時間で終えられるようになると、発注する側は「この作業にこの人数は要るのか」と考えるようになります。仕様が決まった実装やテストの作業ほど、その問いを受けやすくなります。
ただし、すべての仕事が同じように減るわけではありません。現場の業務を理解して要件を整理する人、システムの全体像を知っていて判断できる人は、引き続き必要とされます。
現場で求められる役割が変わっていく
AIを使った開発が広がると、エンジニアの役割は「書く人」から「AIに書かせたものを確かめ、判断する人」へと寄っていくと考えられます。何を作るかを決め、出てきたものが業務に合っているかを判断するには、業務とシステムの両方を知っている必要があります。
SESのエンジニアは、いくつもの現場で業務とシステムの両方に触れてきました。その経験は、役割が変わっても活かせます。SESの将来性は、時間を売る形から、判断と経験を売る形へどれだけ移れるかで変わります。
会社に依存しすぎることのほうが課題になる
SESのエンジニアにとっての課題は、仕事が減ることそのものより、収入の決まり方を自分で動かせないことです。単価交渉も現場選びも、所属会社を通します。自分のスキルが上がっても、それが収入に反映されるまでに時間がかかることがあります。
会社の外に小さくても自分の収入の柱があると、キャリアの選び方に余裕が生まれます。会社を辞める必要はありません。今の働き方を続けながら、もう一本の柱を育てるという考え方です。
副業を始める前に、就業規則と契約を確認する

SESのエンジニアが副業で自分のプロダクトを持つとき、最初に確認すべきなのは、所属会社の就業規則と、常駐先との関係です。ここを飛ばすと、せっかく作ったものが問題の種になります。
所属会社の就業規則で確認すること
まず、就業規則で副業が認められているかを確認します。許可制か届出制か、禁止されている業務の範囲はどこか、競業にあたる仕事の定義はどうなっているか。会社によって書き方は大きく違います。
規則の意味がはっきりしない場合は、人事や上長に確認しましょう。副業として自分のプロダクトを作り、少額でも売上が出るなら、規則で求められる手続きを事前に済ませておくほうが後々の手間を減らせます。判断に迷う点は、社労士や弁護士など専門家に相談してください。
常駐先の情報と時間は使わない
客先常駐の場合、常駐先のセキュリティ規程や秘密保持の約束にも従う必要があります。常駐先で知った業務の情報、社内の資料、コードを自分のプロダクトに使うことは避けてください。常駐先の端末やネットワーク、勤務時間を副業に使わないことも基本です。
常駐先で見た課題をそのまま持ち出すのではなく、同じ課題が業界の外でも起きているかを自分で確かめることが大切です。会社員のまま事業を準備するときの考え方は、会社員をやりながら起業する準備。在職中にしか作れないものでも整理しています。
自分のプロダクトの種は、SESの経験の中にある

規則を確認したら、何を作るかです。SESのエンジニアは、いくつもの現場を経験している分、プロダクトの種になる経験を多く持っています。
現場を渡り歩いた経験を、業種の外から見直す
SESでは、短い期間で違う業種や違う会社の開発に入ることがよくあります。そのたびに、似たような困りごとを目にしているはずです。環境構築の手順が人によって違う、引き継ぎ資料がない、テストの手順が属人化している。
大事なのは、特定の常駐先の話ではなく、複数の現場で共通して起きていたことを抜き出すことです。何度も見た困りごとは、それだけ多くの人が困っている証拠になります。ハコブネ式の原則「材料は受託の中にある」は、SESの経験にも当てはまります。
自分自身が最初のユーザーになれるものを選ぶ
SESのエンジニアが副業で作るなら、自分自身が最初のユーザーになれるものから始めるのも一つの方法です。自分が現場で欲しかった道具なら、使い勝手を自分で判断できます。
ただし、自分だけが欲しいもので終わらないよう、早い段階で他の人にも見せます。ハコブネ式の原則に「動くもので聞く」があります。構想を話すより、動く試作を触ってもらうほうが、相手の本音が分かります。エンジニアの副業で個人開発を事業にする手順は、エンジニアの副業で個人開発を事業にする|作る前に売れるか確かめる手順で詳しく解説しています。
会社員の時間で進めるための3つの決めごと

副業の時間は限られています。平日は常駐先の勤務、残業もある。その中で進めるには、先に決めておくことがあります。
週の枠を先に押さえる
副業に使う時間は、空いたときに使うのではなく、先にカレンダーに入れます。たとえば週4時間です。土曜の午前2時間と平日の夜1時間を2回、のように決めておけば、忙しい週でも最低限は進みます。
時間と仕事の両立の考え方は、起業と会社員の両立。時間を先に決めて、作る前に人に会うでも取り上げています。
失ってよい時間とお金の上限を決める
ハコブネ式の原則に「上限を決めて大胆に」があります。3か月で使う時間と、サーバー代やツール代などのお金の上限を先に決めます。上限の中なら迷わず試し、上限に届いたら続けるかどうかを判断します。
会社員の副業は、生活費を本業で支えられる分、焦らずに試せます。最初の3か月は、売上より「何人に試作を見せ、何人が払うと言ったか」を記録するほうが、続けるかどうかの判断に役立ちます。その利点を活かすためにも、上限を決めて、無理のない範囲で進めましょう。
最初のお客さんは交流会やコミュニティで探す
フリーランスなら既存の取引先に提案できますが、SESのエンジニアが常駐先に自分のプロダクトを売り込むのは、契約や関係の面で避けたほうが安全です。最初のお客さんは、交流会やコミュニティなど、本業と切り離したところで探します。
反応がよければ、有料モニターとして少額で使ってもらいます。ハコブネ式の原則「実績は有料モニターで」のとおり、払ってでも使うという反応が、正規リリースに進む根拠になります。収益モデルの選び方は、個人開発の収益化|払う人と使う頻度で選ぶ5つの収益モデルと最初の1人を参考にしてください。
副業のプロダクトを、本業のキャリアにもつなげる

自分のプロダクトを持つ経験は、収入の柱になるだけではありません。SESのエンジニアとしての働き方にも返ってきます。
作って売った経験は、要件を決める力になる
自分のプロダクトを作り、誰かに使ってもらい、お金を払ってもらう。この経験をすると、現場で仕様を受け取る側から、何を作るべきかを考える側に視点が移ります。要件を整理する力は、AIで実装が速くなっても価値が残りやすい力です。
自分のプロダクトで顧客と話した経験は、SESの現場でも要件を決める側に回るための材料になります。AI時代にエンジニアが伸ばしたい力は、事業開発に進むエンジニアへ|AIでコードが安くなった後に効く4つの力で詳しく書いています。
収入の柱は、少しずつ太くする
副業のプロダクトの売上が出始めても、すぐに働き方を変える必要はありません。ハコブネ式の4段階は受託業者向けの目安ですが、考え方は同じです。最初は本業がほぼすべてで、有料モニターの売上が少し加わり、正規リリース後に売上が安定してから、働き方を見直します。
独立や転職を考えるのは、自分のプロダクトの売上が数か月続けて見えてからでも遅くありません。本業の収入があるうちは、売上の数字を見ながら判断できる立場にいることを活かしましょう。
売れなくても、経験は残る
ハコブネ式の原則に「売れなくても沈まない」があります。副業のプロダクトが思うように売れなくても、作った経験、使った技術、話した相手は残ります。次の現場での提案や、転職や独立を考えるときの実績として使えます。
よくある質問5選

質問1SESの仕事はAIでなくなるのですか?
すぐになくなるとは考えていません。ただ、稼働時間で売る形は、AIで作業が速くなるほど単価が下がりやすくなる可能性が高いと見ています。要件を整理する仕事や全体を判断する仕事は、価値が残りやすい部分です。
質問2SESで働きながら副業をしてもよいのですか?
所属会社の就業規則によります。副業が許可制か届出制か、禁止されている業務の範囲はどこかを確認し、分からない点は人事や上長に聞いてください。判断に迷う場合は、社労士や弁護士など専門家に相談しましょう。
質問3常駐先で気づいた課題をもとにプロダクトを作ってもよいですか?
常駐先の情報や資料、コードを使うことは避けてください。秘密保持の約束に触れるおそれがあります。複数の現場で共通して起きていた困りごとを抜き出し、業界の外でも同じ課題があるかを自分で確かめる形にしましょう。
質問4副業の時間が週に数時間しか取れません。
週4時間程度でも、枠を先に決めておけば進められます。最初から完成品を目指さず、動く試作を作って人に見せるところまでを目標にすると、少ない時間でも前に進みやすくなります。
質問5最初のお客さんはどこで探せばよいですか?
常駐先への売り込みは避け、交流会やコミュニティなど本業と切り離したところで探すのが安全です。動く試作を見せて反応を聞き、よければ有料モニターとして少額で使ってもらいます。
今週、就業規則の副業の項目を読む
最初の一歩は、所属会社の就業規則で副業の項目を読むことです。許可制か届出制か、禁止されている範囲はどこかを確かめ、必要なら人事に問い合わせます。それが済んだら、これまでの現場で何度も見た困りごとを3つ書き出してください。
ハコブネは、受託と自社の新規事業を並行してきた株式会社Walkersが運営する、AI×事業開発のコミュニティです。書き出した困りごとをどう試作にするか、限られた時間でどう進めるかを、Discordやオンライン交流会で会員同士で相談しながら進められます。入会を前提にしないオンラインの無料相談会もあるので、自分の状況を話すところから始めてみてください。
この記事で触れた事例の出典
最終更新:2026年10月21日
